<居酒屋の物語 -Tavern Chronicle->
居酒屋は薄暗かったが、さびれて貧しい店の様子を包み隠すのに十分と言うわけではなかった。とはいえ、数少ない旅人たちは、そのことには気付かないふりをしていた。しばらくすると入り口の戸が開き、年齢も定かでない背の高い痩せた男が入ってきた。そして、部屋の中の新顔、特に今、あなたと他の数人が座っているテーブルのあたりにちらりと目をやった。あなたには知る由もないことだが、この男は世界を救える者を探しに毎晩この店にやってくる、ここではちょっとは知られた男だった。そんな事とはつゆ知らず、あなたはその男がテーブルに近づいてきたときも、何気ない一瞥を与えただけだった。
彼は主人にワインを頼み、このテーブルに座っていいかと尋ねてきた。彼がつまみを持ってきていたので、断る者は一人もいなかった。彼はテーブルの端に座り、居合せている者の顔を注意深くひとわたり見回した。
「旅の方々、我が美しき町リルガミンへようこそ」
彼はテーブルにいる、したり顔や、からかうような表情の者たちを無視して話し始めた。あなたは黙って彼が続けるのを待った。
「見たところ、あなた方はここは初めてのようですね」
彼は続けた
「ならば、この土地や、人や、我々が吸っているこの空気が、悪しき方へ向っていることなど気付きはしないでしょう。もしよければ、今宵は冒険と魔法と勇気の物語を話してさしあげましょう」
ワインがきたので、彼に文句を言う者はいなかった。
「数年前…」
話は始まった。
「ちょうど今ここに座っているあなた方のような、勇敢な冒険者の一団がありました。彼らは恐ろしい龍ル・ケブレスから、リルガミンの宝珠を取り戻すために探索を始めたのです。その珠は、我が国の健全な繁栄を、我々の知らない方法で守っていました。それが無ければ、地震や神罰や疫病が我が国を覆ってしまうのです。幸運にも、冒険者達は勝利をおさめて宝珠を持ち帰りました。皆は喜びにあふれ、再び、平和と繁栄がもたらされるはずでした」
「しかし、数年経つと、恐ろしいことが再び起こったのです。人々は混乱し、恐怖しました。ブラザーフッドと呼ばれる神秘のグループに守られているこの宝珠では、我が国を守ることはできないのか? 人々は疑問の答えを求めて、賢者の最高会議にすがりついたのです」
「緊急の会議が開かれました。賢者達は閉ざされた扉の向こうで、リルガミンに新たに迫った危機に対する解決策を見出そうと、持てる知識と魔力のすべてを使いました。そして数週間の後、彼らは青ざめ、やつれ、悪い知らせを持って現れたのです。」
テーブルの誰もが沈黙し、すっかり見知らぬ男のとりこになっていた。彼は一息おいて、話を続ける前にそれぞれの目を見渡した。
「『真実はまさに混沌そのものを織りなしておる。』賢者はこう告げた。『超自然の魔法の渦にしてすべての災害の原因が、ブラザーフッド寺院の真下、奥深くで形成されておる。4つの自然の力のバランスが壊され、その裂け目が結び付いて、災いの渦の中心部に横たわっている。それは次第に大きくなり、我々の町や国はおろか、全世界を飲み込んでしまうことだろう。我々の知る限り、間もなく世界は存在しなくなる。』」
「このひどく危険な状況で、賢者達が頼れる人物はたった一人でした。魔法の世界と自然界のバランスを見守り、これを保つ責任を持つ大魔法使い、ゲイトキーパーという人物です。この、かつては人間で、今やそれ以上の存在である人物は、もし生ある者の声を聞く気があるなら、必ずや助けとなるはずでした」
「賢者達は、自分達の要請は応えられるものだと確信していました。しかし、恐るべきことに、ゲイトキーパーは、賢者達が崩壊を願っている、まさにその渦の中心に囚われてしまっていたのです! 恐怖にかられ、賢者達は彼らよりもさらに神秘的霊感と魔法の知識を持っている、ブラザーフッドの元へと向かいました。そして、ブラザーフッドの高位の予言者、ブラザー・ドリューによって、悪と裏切りの話が水晶の元に明らかになったのです」
「それは、宇宙のすべての秩序の崩壊を願う、ソーンという名の裏切り者のブラザーの物語でした。彼女は無限に広がり続ける裂け目、すなわち、今我々の世界を脅かしている渦を作り出す方法を見いだしたのです。この裂け目から、混沌が支配し、我々の世界が存在できない、新たなる宇宙が創り出されるのです。彼女はゲイトキーパーを罠にかけ、彼を虜にしました。彼女を止めることができなければ、我々はこの世界と共に全滅することになるでしょう」
見知らぬ男は、聞くものに考える時間を与えるために、しばらく黙り込んだ。
「それはただのお話なのですか? それとも本当のことですか?」
あなたはその答えを恐れつつ、あえて尋ねてみた。
見知らぬ男は皮肉っぽく笑って、穏やかに言った。「我が名はフォンティザン。議会の十二賢人のひとり。その私が語った話です」
その言葉と共に急に部屋が暗くなり、見知らぬ男は姿を消した。
と、ほとんど同時に、部屋のずっと隅の方で大きな外套を着た暗い人影が現われた。あなたは、この不可思議で恐るべき場所でこれ以上何が起きるのか不安に思いながら、本能的に武器に手を伸ばした。
「恐れることはありません」
人影は男とも女とも分からぬ声でそう告げた。
「私はイェルダーブ。リルガミンの最も高位なる賢者です」
あなたは目を見開いたが、それでも暗い隅にぼんやりした影しか見ることはできなかった。あなたはおぼろげな恐怖を感じたが、必死にそれを表に出さないようにとりつくろった。
「我々は、ブラザーフッド寺院の最も奥深くへ降りて行く、勇敢な冒険者を求めています。そこには数多くの危険が待ち受け、勇気、強さ、力、そして知性を試されることになるでしょう。そこでゲイトキーパーを見つけ、無限に広がり続ける渦から、彼を解き放たなければなりません。しかしその前に、自らの利のみを追い求める邪悪な魔法使い、ソーンを打ち負かさなければならないのです」
「この危険な冒険を行なう勇気があるのなら、まずブラザーフッドの高位の神官、グブリ・ゲドックを探しなさい。彼はリルガミンの宝珠の秘密を守っています。寺院の迷宮の、それほど深くないところで見つかるでしょう。彼は知っていることならすべて教えてくれます。しかし、知りたいことを得るためには、正しい質問をしなければなりません。そして、その知識なしには、本当の冒険が始まらないのです」
「寺院の奥底に向かって、ソーンの魔法で作り出される危険を打ち負かさなければなりません。そして数多くの試練をくぐり抜け、囚われの大魔法使いを助けだすのです。彼を自由にして、世界をその運命から解き放ってください」
「我々の願いと祈りはあなたがたと共にあります。グブリ・ゲドックとゲイトキーパー、そして必ずや邪悪なるソーンを探し出してください。ララが共にありますように!」
そういうと、イェルダーブは姿を消した。今や決断を下すのはあなた自身。あなたには「災渦の中心」に挑む勇気はあるか?
<種族 / 職業>
【種族を決める】
人間 (Human) |
特に秀でたり、劣っている特性はありませんが、信心深さが少し不足しています。 |
エルフ (Elf) |
賢くて信心深いのですが、あまり丈夫ではありません。呪文を使うのがとても上手です。 |
ドワーフ (Dwarf) |
強く、しかも丈夫ですから、最高の戦闘員になれます。 |
ノーム (Gnome) |
敬虔で敏捷な彼等は、素晴らしい僧侶になれます。 |
ホビット (Hobbit) |
敏捷で非常に運が強いので、優秀な盗賊になれます。 |
【職業を決める】
戦士 (Fighter) |
高いH.P.を持ち、武器による直接攻撃に向いています。ほとんどすべての鎧、武器を使えます。 |
魔法使い (Mage) |
魔法使いの呪文を唱えられます。H.P.は低く、杖や、ローブくらいしか装備できません。 |
僧侶 (Priest) |
僧侶の呪文を唱えることができます。H.P.は戦士と同程度ですが、戦士ほどうまくは戦えません。メイスやフレイルなどの武器しか使えず、軽い鎧しか装備できません。アンデッド系モンスターの呪いを解き、追い払う、ディスペルという力を持っています。 |
盗賊 (Thief) |
宝箱の罠を見抜き、はずすのが得意です。魔法使いよりは高いH.P.を持っています。短剣、短刀が使えて、革の鎧、小型の楯を装備できます。 |
ビショップ (Bishop) |
僧侶と魔法使いの中間的な存在です。両者の中間のH.P.を持ち、僧侶の武器と革の鎧を装備できます。魔法使いの呪文から覚え始め、ディスペルができるようになります。正体不明のアイテムを識別し、正体を見極められます。 |
侍 (Samurai) |
風変わりな闘士です。戦士と同じく多くの武器と防具を使えます。最初は戦士よりもH.P.が高いのですが、長い目で見れば戦士の方が高くなります。レベル4からゆっくりと魔法使いの呪文を覚え始めます。 |
ロード (Lord) |
戦士と僧侶の組み合せです。H.P.と能力は戦士と同程度です。レベル4から僧侶の呪文を覚え始め、レベル9からディスペルができます。 |
忍者 (Ninja) |
超人的戦闘マシーンです。侍と同じ武器と鎧を使えますが、何も持たないときに最高の動きをし、敵に大打撃を与えたり、一撃で強敵を倒すこともあります。レベルが上がるほど、アーマークラス(A.C.=防御力)が良くなっていきます。呪文は覚えられません。盗賊より多少腕は落ちますが、宝箱の罠を見抜き、はずせます。 |
<メイルストロームの神話と神々 -The Myths and Muses of the Maelstrom->
「災渦の中心」にはたくさんの魅力的なキャラクタが登場します。冒険の過程で、ここに紹介されているキャラクタに出会うこともあるでしょう。それ以外にも、数多くのキャラクタが待ち受けています。中には打ち負かさなければならないモンスターもいます。あるいは何かを語ろうとする者かも知れません。誰もがなんらかの意味を持ったキャラクタなのです。
【アイロノーズ -Ironose-】
アイロノーズは迷宮の中で店を経営しています。彼はアイテムを交換したり、宝石を売ったり、レベル1の冒険者と戦ったりしています。「迷宮一のお買い得値段」が自慢なので、冒険者の役に立つこともあるでしょう。
アイロノーズは迷宮の中にも店が必要だと考えました。それがすべての始まりです。最初、商売はそれほどうまくいきませんでした。アイスファントムに薬を売ったり、戦士に武器を売ったりしていたのです。しかし、次第に彼の商売は冒険者達の間で評判になり、また必死に行なったビラ広告の効果もあって、商売の景気は向上し、今日の成功を維持できるようになりました。
アイロノーズはかなり強者の戦士ですが、通常は友好的な人です。なにしろ、お客様は神様ですから(たいていの場合は…)。
【笑うヤカン -The Laughing Kettle-】
信じようが信じまいが、ヤカンが自由に放浪している土地が実際にあります(ヤカンが放浪するものかどうかは別にして)。そこはフィルニアと呼ばれる国で、ご推測どおり、それが「笑うヤカン」の祖国です。
祖国にいる頃、彼は教養豊かで、尊敬され、愛されるべき人でした。しかし、ヤカンが誰もわからないような情報を、何度も何度も繰り返し述べ始めるようになると、次第に人々は警戒し始めました。かつては彼の友人だった者も、「奴は自分が何でも知っていると思っているだけさ」と陰口を言うようになりました。実際には、ヤカンは人々を助けようとしただけだったのです。嘲りは続き、彼はそれ以上耐えられなくなりました。もはやこの豊かな国を離れて、メイルストロームへ向かうしかない。彼はそう決心しました。それは決して正しいことではなかったのですが、引き留める者は誰もいませんでした。彼は今、この出来事を笑っています。明日も笑っていることでしょう。
ヤカンはメイルストロームの周辺にもう何年もいます。笑い続けていることを別にすれば、彼の知恵は相当なものです。彼はまだ、毎日のように「知ったかぶり」を繰り返しています。
【マンフレッティの店 -Manfretti's-】
「冒険に疲れた? 思ってたように戦えない? それなら、メイルストロームの娯楽の殿堂、マンフレッティにおいでなさい!」 落書きされている宣伝文句。しかし、マンフレッティの店では、手に入る娯楽も知識も噂以上のものです。
五感を喜びで満たし、魂をワクワクさせ、心暖まるところ、それがマンフレッティの店です。この店は、人生を愛し、一流のユーモアのセンスを持った魔法使い、マンフレッティによって作り出されました。彼はその昔、最も必要とされているのは安らげる場所であるということに気付き、仲間の女性たちと共に迷宮の壁をくりぬいて、そこに娯楽の殿堂を作り上げたのです。マンフレッティと5人の女性たちはその仕事に何年もかけました。そしてそれを作り終えると、マンフレッティは自分が成し遂げたことを見て微笑み、さらに次なる計画を考え始めました。
女性たちに別れを告げ、「より楽しめること」を求めて彼は出発しました。しかし、いくら待っても彼は戻ることなく、今日に至っても彼の居所は不明です。しかし、彼が残していった女性たちは彼の夢を受け継ぎました。彼女たちは娯楽の殿堂の営業を続け、そこで彼の帰りを今でも待っています。ここを訪れれば(きっとあなたもそうするでしょう)。彼女たちの誰かに会うはずです。そして、きっと全員に会わずにはいられなくなるでしょう。
【龍の酒ビン -Ye Dragon's Flagon-】
もし、この店の壁が話すことができたなら、いったいどれほどの話が聞けることでしょう。迷宮のいたるところから、疲れたドワーフの戦士たちは、休息と休養とウイスキーを求めて「龍の酒ビン」にやってきます。
ここは不思議な魅力のある店。小柄な戦士たちは、なんとかしてその酒場をそれとわからぬように隠そうとしました。あなたには決して見つけられないでしょう。そこは彼らのとっておきの店なのです(もちろん、店の儲けはすべて、この店のメンバーの5人のドワーフのところへ戻ってきます)。b.m.674年(メイルストローム以前674年)に建てられたこの店は、どこにでも巨大な酒ビンを持って行った、大変愛らしく巨大なビジモーの龍を讃えて作られました。たくましい侍、イェテジェの手によって龍が殺された後、ドワーフたちは酒ビンを、見つかることのないこの場所へ持ってきたのです。
もしこの店に来ることができれば、いつでも話をしたがっているドワーフに会うことができるでしょう。彼らは迷宮に住み、価値ある何かを提供してくれるに違いありません。しかし、時にはドワーフの戦士たちも冒険に出ていることがありますから、何度も訪れてみたほうが良いでしょう。
【トーガ・ラマ -The Toga Llama-】
この驚くべき生き物を見る機会を捨てられる者はいないでしょう。トーガを身に付けたラマ。それはごくあたりまえに見られる光景ではないし、もちろんごくあたりまえの動物でもありません。
ずっと、ずっと昔、ラマの一族は、リトリスィディッキードーの平原を放浪していました。その平原は焼けるように暑かったのですが、ラマはこの環境にかなり良く順応していました。
ある日、ナラ・オーマンという名の冒険者が、商品を持ってやって来ました。「私はここに素晴らしい物を持ってきました。このひどい暑さを止めるために必要な物です。この高級なデザイナーのトーガを、たったの金5000枚であなたに売りましょう。どこへ行ったって、こんな物は他には見つかるはずありませんよ!」
そして彼は延々と喋り続け、話し続け、言い続けたのです。結局、ラマは彼の話とトーガを買いました。彼を黙らせるために買ったのかどうかは不明です。とにかく、ラマたちは彼の後に続いて城まで行き、空気も冷たく生活も容易な迷宮に入りました。これがトーガ・ラマの話です。
【ルビーウォーロック -The Ruby Warlock-】
彼のことは昔から良く知られています。まるで永遠の昔から生きているかのように。若い頃、彼はまさに宝石のような人物でした。毎日呪文の練習を繰り返し、先人のごとく、より深い迷宮をも堂々と恐れることなく歩ける時を心待ちにしていました。
しかし、酒と言う名の精霊が彼の魂を奪ったのです。今では、通りすがりの者に、酒をたかるほど落ちぶれています。迷宮の生き物たちは、哀れみをもって彼を見つめ、できる限りその望みを聞くようにしています。彼は本当は悪いヤツではありません。ただ途中で落伍した魔法使いというだけなのです。
彼は怒らない限り、かなりのんびりした人物です。しかし「ウォーロック(魔法使い)」と言われるだけあって、強力な魔法をいくらでも使うことができます。ですから言動には気を付けましょう。
【幽霊の巣窟 -The Ghost's Nest-】
今までに幽霊を見たことがなくても、もしあなたが軽率な人物なら、ここであなた自身の幽霊を見ることになるでしょう。そう、ここは伝説の幽霊の巣、自分が死んでしまったという事実を受け入れたくない人々の家です。
その場所は誰にもわかりません。しかし、そこはおとなしい人が訪れるような所ではありません。噂では、もっとも強い人でさえ、その住人の蒸気のような指の下では生きてゆけないといわれています。不幸にも、幽霊たちはいつでもそこにいるらしいので、「楽しい散歩」などまったく不可能なのです。
かつて、迷宮の泥の中に古い巻物がありました。羊皮紙のその巻物はひどく汚れていて、文字などはほとんど読めたものではありませんでした。そして、かろうじで読み取れた文章にはこう書かれていました。
「死が待ち受け、金はうなり、恐怖はたくさんある……3から、まっすぐ汝に……」
【盗賊のアジト -The Den of Thieves-】
メイルストロームのほとんどすべての路地から追放されたのが、盗賊のアジトに住む盗人たちです。その哀れな連中は、迷宮の浮浪者とされていますが、本当は有能な連中です(少なくとも、あなたが自分の荷物を安全に確保しておける限りは)。とはいえ、彼らを見つけるのは少しばかり困難です。
何年もの間、彼らはバカ正直な冒険者たちから、アイテムを盗んで集めていました。剣、盾、弓、薬、なんでもあるでしょう。そして当然、彼ら自身を守るためには、良い隠れ家が必要になりました。盗人のうちの3人は、迷宮の奥深くにある洞窟が完璧な場所だと確信しました。しかし、ギルドの他のメンバーは、彼らに迷宮に住んでいるモンスターのことを思い出させたのです。そして最後に、もっとも賢い者が、誰もが賛同するアイデアを思い付きました。隠れ家は、まったく光の入らない場所に作られたのです。誰もその場所を見つけられないように。
とにかく探してみることです。彼らが盗みを働くように、あなたも彼らの心を盗めるかもしれません。音もなく動き回る彼らのこと、ほんの小声でささやかれた話も、その耳に入れているかもしれません。噂話を手に入れたいなら、何度も彼らのところに足を運んでみましょう。
【ハークルビースト -The Hurkle Beast-】
待ち伏せして忍び寄る、働く、話す、これらが悪名高きハークルビーストの特性です。彼はしょっちゅう「ハークル」していたハークエニスコン族の最後の生き残りなのです。もしも洞窟を冒険しているときに歌を聞いたら、それはおそらくこいつがすぐそばにいるということです。
昔、勇敢な冒険者たちがハークルビーストを捕らえ、箱に詰めてしまったことがありました。誰もそれが逃げ出せるなどとは思いませんでした。しかし、その箱はぼろぼろになり、ハークルビーストは自由に歩き回っているのです。
不幸にも、ハークルビーストは、自分の故郷に戻る方法を知りません。ですから、彼は今でもここに残っているのです。
【スナッチ -The Snatch-】
スナッチ(ひったくり)は、マンフレッティのところに住む悪賢い小泥棒です。たいていの泥棒と同様に、スナッチは多くの噂話を耳にしています。そして、やはり同業者の類に洩れず、彼は秘密を守っていることができないたちなのです。
彼は若い頃からこの仕事をしていたわけではありません。ある日、彼はちょっとしたことを思い付きました。彼は盗族のアジトに加わる申し入れをしたのです。初心者だった彼は、仲間からなんでもいいからひとつでもふたつでも教えてもらいたかったのです。もしだめなら、盗む覚悟でした。2週間の後、彼の申し込みは満場一致で却下されていました。彼はテストにまったく合格せず、情報を盗もうとして3回も捕まったのです。しかし、彼はもっとも重要なテストに合格しました。すなわち、これらのテストが彼にとっては重要だったのです! 彼は「盗人ハンドブック」を洞穴から盗み出し、その上、仲間のアイディア、彼らの取引上の秘密までも盗み出しました。彼はアジトのメンバーになりたかったわけではなかったのです。彼は、彼らが与えるべき物だけが欲しかったのです。
【グィライオン -Gwylion-】
決して彼女たちは自ら望んでそうなったわけではありません。少し以前は、彼女たちは友好的で陽気な人々でした。今、彼女たちは原因のわからない何かに対する報復を決心して、迷宮を放浪しています。彼女たちに挨拶する者は、皆攻撃を受けなければならず、彼女たちがパーティに対して停戦を申し出ることは滅多にありません。
彼女たちが変わってしまった理由は知られていませんが、マンフレッティの失踪が明かになったすぐ後からグィライオンに変化が起こりました。少女たちはマンフレッティを愛していたのだと推測している者もいます。私のような他の者は、それは彼と一緒に楽しいでいた者への嫉妬だと信じています。マンフレッティがまだいた頃は、彼女たちは彼の冗談や話を何時間も続けて聞いていました。しかし、彼の失踪後、彼女たちの訪問は次第に減り、やがてまったく無くなりました。彼女たちはまだ彼を愛しているのかもしれません。
この哀れな生き物を不憫に思うのは自由ですが、それは自らを攻撃にさらす充分な理由ではありません。少なくとも、彼女たちは慈悲など見せはしないのです。
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